無邪気なあなた(アナスタシア)




目の前に差し出された、ナツメの実。
これ、どうしたらいいの?


「小さい頃によく食べたんですよ」


そう言って蔵人さまは
赤い実をひとつ、ふたつ、
その手につかみ
もう片方の手でそれを私に差し出す。

…。
てのひらにのっていない。
赤い実はしっかりその指に持たれていて、私の口の前に。


顔が赤くなるのがわかる。
もしかすると、
ナツメの実と同じくらい赤くなっているんじゃないの?と自問自答。


もう何度も口づけを重ねたのに。
もう何度も肌を合わせたのに。

どうしてこんなことに
こんなに胸が高鳴るの?


あなたは私を「無邪気な人」だと言うけれど、
こんなことをいとも簡単にしてしまうあなたは
実は誰よりも無邪気なのではないかと思う。


「おいしいですよ?」


そう言ってあなたは、ふわりと微笑む。
私はそんなに変な顔をしていましたか?

あなたの気持ちに応えたくて
目を閉じて、口をあけた。


甘酸っぱい。
まるで今の私の気持ち。


きっと、私はあなたといる限り、
このナツメの実のような気持ちを忘れないでしょう。






二人で散歩なぞ。

子供の頃、学校の帰り道にナツメの木があって、
よく友達とつまんで食べました。
そのころは名前を知らなくて、
「グミの実」なんて呼んでいたのですが。
小さくて、柔らかくて、可愛いのです。





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