僕のナツメ(蔵人)
赤い あかい ナツメの実。 この実を 君に。 君は僕の指先にあるナツメの実を 不思議そうに見つめる。 初めてみる食べ物に躊躇しているのだろうか? 彼女を安心させたくて、 目を丸くして きょとんとしている彼女が可愛くて、 自然と笑みがでる。 彼女の小さく開いた口に、ナツメをひとつ。 彼女は少ししか口を開けなかったから、 こんなに小さなナツメもはいらない。 だから、 指でナツメを押した。 指先があたたかい。 彼女のくちびるに触れたから。 僕の指先にある彼女のくちびるは さっきまで僕の指にあった、ナツメの実に似ていると思った。 彼女のくちびるは ナツメと同じように 赤くて、小さくて、柔らかくて。 ふと、味わってみたくなった。 君は僕のナツメの実。 |