「ロザリオ」 (フュリー)
クロード様と一緒に歩く。 つないだ手はなんて心地よい。 自分の影とクロード様の影が重なっているのを見た。 なんだか気持ちがあたたかい。 ずっとこのまま歩いていたい気持ちになった。 こんなに穏やかな気持ちになったのは一体いつぶりだろう。 ずっとシレジアとレヴィン様のことで頭がいっぱいだったから。 「フュリー、あなたに訪ね人ですよ」 ふわり、と微笑み、語りかける。 「…訪ね人…?」 「ええ、あなたの待ち人ですよ」 一体どうなされたのだろう。 どれだけ目をこすっても 私の目には人など見えない。 見えるのは草木や建物だけ。 時々クロード様は私たちには見えないものが見えているかのよう。 そのとき、 物陰から何かが飛んできた。 別に敵意は感じられない。 優しく私のほほに「それ」はあたった。 「それ」はロザリオだった。 天使が描かれたロザリオ。 でも、一体なぜ…? 「シルヴィアだよ」 「…レヴィン様…!!」 驚きでそれ以上なにも言葉がでない。 今日はいろいろある日で感情が付いていけない。 一体何があったというのだろう。 「シルヴィアがお前と仲直りするのに選んだんだよ、 そのロザリオ。 お前にはロザリオが似合うから、って」 「…………」 「肝心の本人はお前にロザリオ投げつけて やっぱり気恥ずかしくなったのか逃げ出したけどな」 「レヴィン様…」 「ついでにそのロザリオの描かれてるものな、 シルヴィアがどうしても自分をイメージしたものを持っていてほしい、 って何件も探したんだぜ。 あいつもいろいろ考えてんだ。 嫌いにならないでやってくれ」 「嫌いだなんて…」 胸が締め付けられそう。 彼女にひどいことを言ってしまった自分を悔やんで、 悔やみきれなくて。 それでも、 彼女はまだ自分にチャンスをくれたことに。 あたたかくて、あたたかくて。 「探すの大変だったんだぜ。 あいつ、全く妥協しないから」 と溜息まじりに言うレヴィン様は少し疲れてるよう。 きっと本当に大変だったのだろう。 シルヴィアに引っ張られていろんな店を連れられてる様子が容易に想像できる。 その様子が微笑ましく感じられる。 そして そう感じることができる自分が嬉しい。 「良かったですね、フュリー」 そう言って私を見るクロード様は 本当に優しい瞳。 「はい。嬉しいです。 今度は 今度は私からシルヴィアと仲良しになりに行きたいと思います」 「それは良いことですね」 シルヴィアは私にロザリオが似合う、と思ってくれたようだけど、 私に言わせればシルヴィアの方が似合いそう。 でも 私のイメージってなにかしら。 ちらっと隣のクロード様をみる。 「クロード様、もう少し、付き合ってもらってもいいですか?」 「ええ、喜んで」 こんなにシルヴィアのことを考えるのが 楽しいなんて。 彼女もこのロザリオを選んでくれている時、 こんな気持ちだったのかしら。 とにかく、探しにいこう。 そして、会いに行くの。 |