「嫌いになんて なれない」 (シルヴィア)
あたしが怒りと後悔を抱えたまま道を進んでいくと そこにレヴィンがいた。 今は見たくなかったのに。 なんて間の悪い。 レヴィンをみるたびに フュリーの悲しげな顔が浮かんでくる。 「よぉ、シルヴィア」 「うん、じゃあね」 「おい、なんだよ、それ」 あんまりにも適当に返事をしたのが気に食わなかったのか、 追いかけてきた。 このまま話していたら、 レヴィンにも八つ当たりしちゃいそうだからやめてほしい。 でも、そんなことはレヴィンはお構いなしにやってきた。 「なんだよ、その態度は! 気分悪いぜ!!」 「だったら追いかけてくることないじゃない! わざわざ気分悪くなりにきてるなんて、レヴィンばかじゃない?!」 「なっ!!」 腕を掴まれた。 引っ張られた。 強制的にレヴィンと向き合う形になる。 怒ってる。 そりゃそうね、とまるで人ごとに思っている自分がいた。 「シルヴィア、どうした? 今日のお前はどうかしてるぜ!」 「…誰のせいだと思ってるの…?」 思わず口からでた思い。 はっとしたけどもう遅い。 レヴィンには聞こえてしまった。 表情がますます険しくなる。 「なんだよ、おれのせいだっていうのかよ?」 「そうよっ!! あたしが怒っているのも! フュリーが悲しんでいるのも!! 全部! あんたがはっきりしないからよっ!!」 完全な言いがかり。 でも、言葉にだして気がついた。 そうだよ、 あたしがこんなに嫌なやつになってんの、 レヴィンのせいじゃない! フュリーが悲しんでるの、 レヴィンのせいじゃない! あんたのせいじゃない!! 「なんでここにフュリーがでてくるんだよっ?」 「ほっといて!! もうやめる! レヴィンなんてやめる!! あんたの顔なんて見たくない!!」 「見ろよっ!!」 ぐいっと両手で顔を挟まれてレヴィンの方を見させられた。 てっきり怒っているのかと思ったら、 よく見たら焦っている? いつも調子ぶって、余裕の表情をしてるのに。 「見ないもんっ!」 「じゃあ、見なくてもいい!」 その瞬間、あたしの目の前が何かに遮られて真っ暗になった。 ううん、何かに包まれた。 レヴィンに抱きしめられたって気がつくのに時間がかかった。 「見なくてもいいから…。 教えてほしい。 なんでそんなに怒ってる?」 諭すような口調じゃなくて、 懇願しているような、そんな口調。 レヴィンのそんな様子は初めてで、 あたしも冷静になってきた。 「…レヴィン」 「うん?」 「あたしのこと好き?」 「…好きだよ」 「フュリーのことも好き?」 「?…ああ」 「じゃあ、今度、3人でご飯食べに行こうよ」 「なんだよ、それ」 「いいの、行くの、行かないの?」 「…行くさ」 突然おとなしくなったあたしに、 レヴィンはわけがわからないという顔をしている。 (内容もわけがわからなかったんだと思う) でもあたしは、 心のつっかえがとれたようにスッキリしてる。 腹をくくったから。 フュリーと仲直りしてから 曖昧なあたしたちに決着をつける。 たとえ、どっちに転んでも。 そして、それでおしまい。 あたし、フュリーのこと 嫌いじゃないもの。 嫌いになりたくない。 むしろ、好きなのかもしれない。 |