「気品」(シルヴィア)



あたしは、あの天馬騎士が何考えているのかわからないの。
レヴィンのことが好きなくせに、
バレバレなくせに、
自分からは何も言わない。

あたしのこともよく見てる。
レヴィンにくっついてるから?

でも、やっぱり、
フュリーは何も言わないの。
ただ、黙ってる。

普段も、他の人とおしゃべりするわけでもなく、
ただ自分の「任務」をこなしてる。
無表情で。

それって、楽しいの?
なんで黙ってるの?
あたしにはわからない。

だから、あたし、彼女に聞いてみようと思った。
結構長い間、一緒の軍にいて顔を見合わせているのに
フュリーのこと、何にも知らない。


なにも 知らないの。



「ねぇ、ちょっとフュリー
 もしかしてあなた
 レヴィンのこと、好きなの?」


「えっ! …わたしは…そんな…
 ただ、レヴィン王子は
 シレジアにとって大切な方だし…」


そんなのウソよ。
じゃあ、なんであたしがレヴィンといるときに
もの言いたげな瞳でこっちを見てるの??
ごまかさないで!!
あたしは真実が知りたいの。
真実のあなたが知りたいの。
その方が、フュリーだってスッキリするはずよ。

そんなこと思ってたら、ついつい口調が強くなっちゃった。
別に、いじめるつもりはなかったのに。


「あっそう、
 じゃあ、わたしとレヴィンが
 付き合ってもいいのね」

「え、えぇ、べつにかまわないけど…」

「ホントに〜?
 無理してんじゃないの?」


「む、無理なんかしてないわ
 どうして私が
 無理なんかしなくちゃいけないの」


絶対無理してる。
でも、その理由がわからない。
言いたいことは、吐き出してしまった方がいいのに。


なんとなく、フュリーに悪い気持ちがしたわけじゃないけど、
一応宣戦布告。
あとから恨まれるのやだもん。
どっちに転んだとしても。


「べっつに〜、 それならいいんだけど
 じゃあ私がもらっちゃうわよ
 レヴィンさ…」


「あっ…でもね、
 シレジア王妃になる人は
 ラーナ様のような気品がなくてはね…」


電撃に撃たれた、と思った。
いきなりの反撃。
そりゃ、あたし、
気品っていわれても良くわかんないけど、
「お前なんて、ぶたの悪あがき」
って言われてる気がした。
必死に生きている自分を否定された気がした。

あたしにだって、プライドはある。
ううん。
人一倍プライドはあるの。
自分に自信を持たないと、世の中生きていけなかったから。
自分が好きだから。

別に、レヴィンのこと、
シレジアの王子って知ってたわけじゃないのに。
ただ、この人に付いていこうって思っただけなのに。

カッときた。



もうここに一秒でもいたくなかったから、
思わず、決まらない捨て台詞を吐いて走り去った。


あの語らない天馬騎士は
今、何を思うのだろう?




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