私は、幸せです(クロード・フュリー)


チリン

チリン


鈴の音がきこえてくる。
ついにこの時が来たようです。
ふと横を振り向けば、
フュリーが子供たちを寝かしつけていました。

「フュリー」

「はい、クロードさま」

「少し、散歩をしませんか?」


そう言って私は彼女に手を差し伸べる。
その手に彼女はそっとつかまる。
それはあの時から変わっていない。
ゆっくりと私達は歩き出す。

「月がきれいですね」

「はい」

「こうやってあなたときれいなものを見れるのは幸せですね」

「そうですね。今度はセティやフィーにも見せてあげたいです」

「…そうですね」

瞳を閉じ、その情景を想像する。
なんと光に満ち溢れた世界。

ですが…。

そこに私はいないのです。
それは、私が決めた運命。

「…クロードさま?」

「フュリー、
 私は、
 あなたと出会えて幸せです」


 今、こうやって一緒にいてくれること。
 どれほど安らぎを与えてくれたか。
 どれほどの希望を私に与えてくれたか。


「私があなたを愛していること、忘れないでいてください」

「…クロードさま、一体…」

そこで彼女の言葉は途切れる。
瞳も光を失い、意識を失う。


「私は今から風になり、光になるのです。
 覚えておいてください、フュリー。
 幸せを、ありがとう」



鈴の音は運命の歯車が回った合図。
かの人は今生死の境をさまよっている。


世の中の理を崩さないための決まりがある。
失われた命は、命でしか補えない。
それは、神器と言われるバルキリーをもってしても崩せない理。

私は、私の生命を使って
彼を光に導く手助けとなるのです。


犠牲的な考えではなく、
彼が助かれば、
今度は彼がこの世界を救う足がかりとなる。

それは私にはできないこと。
だから私は彼に託す。

先ほど私が想像した光の世界が
本当になる日がくるかもしれない。

それは月明かりのような希望でしかないけれど、
愛するものが美しい世界で過ごせるように、
私は自ら選ぶのです。


バルキリーよ、
この世界に幸あれ。
私の愛した人に、この世界に永遠の光を。

私はそのための道しるべとなるのです。



フュリー、
私は、幸せでした。
ありがとう。









目が覚めた。
意識が戻り、目を開けた時、
すでにクロード様はいなかった。

いいえ、ただいなかったのではないの。
存在が、していない。

私は理解していた。


でも、あなたが私に残してくれた言葉が
貴方への道しるべになるのだと思います。


あなたを、あいしています
クロード様。





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